研究概要 |
(1)本研究の目的は機能性色素による超格子の作製と、超格子の電気的・光学的性質を超高真空中でその場測定することである。そこで、先ず「超格子の作製」と「測定」とが同一の系で行えるよう、金属電極蒸着用ヒ-タ、マスク駆動機構、2端子機構、基板温度制御機構、等を搭載した超高真空装置を立ち上げた。 (2)「色素超格子」を作製するに当たり基礎データが必要なため、色素分子の分子配向挙動の検討を行った。色素にはフタロシアニン色素(塩化アルミニウムフタロシアニンAlPcCl、フッ化アルミニウムフタロシアニン(AlPcF)_n)を用い、基板はアルカリハライド(KCl、NaCl、KBr)の(100)面、水素終端したシリコンのH-Si(100)および(111)面、および石英ガラスとし、-120〜200°Cの一定温度に保持した面に対して色素分子を蒸着させた。構造解析は電子線回折およびx線回折により行った。その結果、AlPcClと(AlPcF)_nとでは基板に対する配向挙動がかなり異なっている。AlPcClは、下記のように基板の原子間距離の影響を受けるが、いづれの場合もAlPcCl分子面を基板にほぼ水平に向けて堆積する。これはAlPcCl分子の中央にあるCl^-が基板のK^+またはNa^+と静電的に引き合うことがエピタキシャル成長を容易にすると考えられる。しかし(AlPcF)_nの場合はこのようなエピタキシャル成長は起きにくい。アルカリハライド上でも基板温度60°Cではアモルファスとなり、120°C以上で(v17xv17)R±31°のモードでエピタキシャル成長する。H-Siの(100)(111)面および石英ガラス面に対しては、(AlPcF)_nの分子面を基板に垂直に向けた形で配向する。AlPcClのエピタキシャル成長は、KClおよびKBr(100)面で(v10xv10)R±27°,NaCl(100)面で(v13xv13)R±11°となる。 (3)バンドギャップが広く層状構造の半導体(GaS)をAlPcCl薄膜上に蒸着し構造解析を行った。次にGaS/AlPcCl/GaSの順序で積層させ、フタロシアニン超格子を作製した。 (4)AlPcCl薄膜(KCl(100)上)の抵抗率を超高真空中で「その場」測定した。その結果、AlPcClの活性化エネルギーは1.10eVとなり、光学的に求められたバンドギャップの1.58eVより小さい値となった。これはAlPcClの励起三重項を介してキャリヤ-生成が起こることを意味し、励起三重項状態は超高真空中に残存するガスの吸着により不純物準位が形成されていると考えられた。 (5)AlPcCl分子配向膜について光電流の過渡応答を測定し、解析した。
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