研究概要 |
放射線エネルギーセンサーであるラジオルミノグラフィ用蛍光体の開発を目的として,アパタイト化合物の一種である塩化リン酸バリウム結晶および塩化リン酸ストロンチウム並びにそれらを希土類イオンで付活した試料を合成し,それらの放射線照射にともなう輝尽現象を調べた。その結果,希土類で付活しない試料はほどんと輝尽蛍光を示さなかった。また,希土類イオンで付活した試料であっても,放射線を照射しない場合もほとんど輝尽蛍光を示さなかった。ユウロピウムイオンあるいはガドリニウムイオンで付活したバリウム塩試料はは,X線照射すると,共に680nm近辺の励起光によりEu^<2+>の4f^65d→4f^7あるいはGd^<3+>の^6P_<7/2>→^8Sに由来する輝尽発光がそれぞれ観察された。しかし,ランタンイオン,サマリウムイオン,ツリウムイオン,イッテルビウムイオンで付活した試料は極めて弱い輝尽発光しか観察されなかった。また,ユウロピウムイオンあるいはガドリニウムイオンで付活したバリウム塩試料のESRスペクトルはX線照射によりF中心の生成に由来するシグナルが観察され,さらにガドリニウムオンで付活したバリウム塩試料の場合のみ,ガドリニウムイオンの付活量が多くなるとH中心に由来するシグナルが観察された。他方,ストロンチウム塩試料はX線照射すると,共にバリウム塩試料の場合よりも短波長(650nm近辺)の励起光によりEu^<2+>の4f^65d→4f^7あるいはGd^<3+>の^6P_<7/2>→^8Sに由来する輝尽発光がそれぞれ観察され,さらにそれらの発光強度はバリウム塩試料よりも高かいことがわかった。これらの知見は,ラジオルミノグラフィの解像度を上げるためにはストロンチウム塩試料がの方が好都合であることを示している。そこで,来年度はこれらの結果に基づきストンチウム塩よりもさらに陽イオン半径の小さいカルシウム塩に着目して,輝尽現象を調べることを計画している。
|