研究概要 |
放射線エネルギーセンサーであるラジオルミノグラフィ用蛍光体の開発を目的として,アパタイト化合物の一種である塩化リン酸バリウム結晶および塩化リン酸ストロンチウム並びにそれらを希土類イオンで付活した試料を合成し,それらの放射線照射にともなう輝尽現象を調べた。その結果,バリウム塩,ストロンチウム塩共に希土類イオンで付活すると放射線照射により輝尽現象が観察され,とくにストロンチウム塩がラジオルミノグラフィの解像度を上げるためには好都合であることが見いだされた。 そこで,本年度は,X線よりもエネルギーの小さい光を照射したさいの輝尽現象を調べ,希土類イオンで付活されたアパタイト化合物における輝尽現象の発現機構を検討した。バリウム塩の場合は紫外線を照射するとわずかに輝尽現象が観察されるに過ぎなかった。他方,ストロンチウム塩は分光蛍光光度計の励起光を利用して可視領域の光を照射しても輝尽現象が観察された。このことは、ストロンチウム塩においてはバンドギャップよりも小さいエネルギーの光を照射しても電子捕獲中心が形成されることを示唆している。すなわち光照射により遊離した電子は,伝導体を経由することなく直接電子トラップに捕獲されることを示している。したがって,レーザー光のような光束密度の高い光を照射源に用いれば情報の書き込みが可能であり,輝尽現象と組み合わせることにより,読み書き可能な光メモリ素子としての利用も可能であると推察される。
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