研究概要 |
1.長球金ナノ粒子を酸化物薄膜中に配向分散させることを目的とし,ゾル-ゲル法により金ナノ粒子が分散した擬ベ-マイト薄膜を作製した。アルミニウムトリセカンダリーブトキシドと塩酸の混合物を還流することによって羽毛状の擬ベ-マイトゾルを合成し,これに塩化金酸四水和物を溶かしてコーティング液とし,スピンコーティングによってガラス基板に作製したゲル膜をヒドラジン蒸気に曝露して膜中に金粒子を析出させた。薄膜の透過型電子顕微鏡像にはアスペクト比が2-4の長球金ナノ粒子の配向分散が見られたが,金粒子の表面プラズマ共鳴に基づく光吸収は偏光面依存性を示さず,長球金粒子は微視的領域においてのみ配向分散していると推察された。巨視的なスケールでの長球金属ナノ粒子の配向分散は達成できなかったが,少なくとも,ゲルのナノ組織を制御することによってこれを現実しうることを示し得た。 2.金属ナノ粒子の表面プラズマ共鳴による電子励起過程の増幅を利用し,湿式太陽電池用チタニア光陽極の可視光応答性を増大させることを目的とし,ゾル-ゲル法により金及び銀ナノ粒子が分散したチタニア薄膜電極を作製した。その結果,金属ナノ粒子の導入による可視域での光応答が観測された。また,フルオレセイン,ローズベンガル,ナイルブルーA担持TiO_2薄膜電極の光陽極特性に及ぼす金ナノ粒子埋入の効果を調べた。チタニア/金界面のショットキー障壁によって伝導帯での電子移動が妨げられるために,金粒子を埋入することによって色素によって誘起された可視域での光応答が減少した。しかしながら,金粒子の表面プラズマ共鳴と最も大きい光吸収の重なりを持つローズベンガルにおいて,金粒子埋入による可視域光応答の減少は最小となり,ローズベンガルと金粒子の間での双極子-双極子結合が光化学過程を増幅していることが見い出された。
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