黒鉛層間化合物は高伝導性材料やリシウム2次電池の電極材料として注目を集めている新素材の1つであるが、その機能性や合成方法等においても、実用化のためには更なる改良が求められている。本研究は、従来から知られている幾つかの異なる種類の層間化合物を1つの黒鉛結晶中で複合化して新しい種類の層間化合物を創造するとともに、この新種層間化合物を含め、多くの種類の蒸発特性を明確にする事を目的として進められている。この主旨に添って、以下の研究を実施した。以下にそれらの成果を示す。 1)多成分系複層黒鉛層間の合成 高ステージの塩化鉄黒鉛層間化合物を最初に合成し、これに臭化ヨウ素や硫酸などを順次黒鉛層間に進入させる方法で複層化する方法を開発し、この方法を用いて、積層秩序の異なる種々の塩化鉄-臭化ヨウ素-硫酸黒鉛層間化合物を合成し、それらの構造的特徴および合成条件をを明確にした。 2)塩化鉄-黒鉛層間化合物の蒸発特性の解明 クヌーセンセル装備質量分析計を用いて、300-500℃における塩化鉄-黒鉛層間化合物からの蒸発分子種およびそれらの蒸気圧を測定する方法を開発し、加えてこの化合物のの蒸発特性、熱力学特性を明らかにするとともに熱的安定性の検討も行った。 3)アルカリ金属系黒鉛層間化合物の合成 従来、テラヒドフラン系有機溶媒中ではアルカリ金属と有機溶媒を含む3元系黒鉛層間化合物しか生成しないとされてきたが、テトラヒドロフランにメチル基を導入する方法で電池活物質と有用なアルカリ金属のみを含む層間化合物を合成する方法を見つけ、合成条件を明確にした。 4)塩化鉄-黒鉛層間化合物の格子振動特性の解明 秩序構造の正しい第2ステージ〜第4ステージの塩化鉄-黒鉛層間化合物の合成方法を開発し、合成した化合物のX線回折によりデバイワーラー因子を正確に測定して、デバイ温度や格子振動幅などの格子振動特性を明確にした。
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