現在、多くの黒鉛層間化合物が高伝導性材料や電池材料に適用すべく研究されている。本研究は、その研究の一環として、高伝導性が期待できる複層黒鉛層間化合物の合成し、さらに生成物の構造及び熱力学的安定性の検討を行うとともに、電池材料として注目されている、アルカリ金属系黒鉛層間化合物の新しい合成法として、溶液法による方法を開発し、その発展と生成物の特性解明に当たっている。さらに、黒鉛層間化合物を合成する際のホスト材として、以前は天然黒鉛のような高結晶化度の材料が使用されていたが、これを結晶性の低い低黒鉛化炭素材料を用いたときの影響についても、研究を開始し、興味ある事実を見いだした。以下に本年、得られた成果をしめす。 1)多成分系黒鉛層間化合物関係 本年度は第5ステージの塩化鉄-黒鉛層間化合物をベースとして、これに臭化ヨウ素あるいは5塩化アンチモンを挿入する方法を検討し、その合成に成功した。さらに、それらの構造をX線回折による精密測定により明らかにした。加えて、ラマン分光測定により、格子振動モードを測定して、これらの複層黒鉛層間化合物の結合特性が、単一の黒鉛層間化合物とは異なっていることを明らかにした。 2)蒸発特性関係 前年度に引き続いて、高伝導性が期待できる塩化鉄-黒鉛層間化合物の蒸発特性の解明を行った。本年度は特に、第3ステージの化合物を合成し、それの蒸発特性をクヌーゼン装備質量分析計により測定を行い、前年度に行った第2ステージ化合物との違いを明らかにした。 3)溶液法によるアルカリ金属黒鉛層間化合物の合成関係 前年度において、リチウム及びカリウムの合成方法を確立したが、本年度は、ルビジウム及びセシウムの化合物の合成方法を検討し、さらに生成物の構造についても、X線及びラマン分光法によりあきらかにした。
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