反応物のうち少なくとも一つが固体であるような燃焼反応では、固体火炎からの残留物が、高温セラミクッス、金属間化合物、複合材料などの工業的にも重要な材料となる。着火後の外部エネルギーを必要としないこの省エネルギー型材料合成プロセスは、燃焼合成法と呼ばれている。このプロセスでは、燃焼反応とほぼ同時に化合物の構造形成が進行するので短時間に材料合成が行われるが、生成物が粉体か多孔質体となり、構造材料となるためにはさらなる緻密化プロセスを必要とする。従来研究では、ホットプレスやHIPのような長時間プロセスが緻密化のために併用されてきた。申請者は、燃焼合成法の長所である短時間プロセスの特徴を失うことなく緻密化を行うために、反応直後の動的圧縮を併用するプロセスを着想した。 具体的には、複合材料の合成・同時緻密化のために次ぎのようなプロセスを計画し、実行した。燃焼合成により作製する対象物質は、高温耐食性をもちかつ軽量な材料として期待できる炭化チタンとチタンアルミ合金からなる複合材料系を選んだ。チタン、アルミニウムと炭素の混合圧粉体を固体圧力媒体である鋳物砂などの内部に包埋し、炭素リボンシートの発熱抵抗体への通電により反応物に着火して、燃焼合成反応を誘起させる。反応直後に圧媒体である鋳物砂への迅速な圧力印加により、試料に擬等方的な動的圧縮を与える。本年度は、特に燃焼合成反応(超高温発熱反応)とそれに続く動的圧縮の併用プロセスを確立し、セラミックス-金属間化合物の複合材料の瞬間焼結の可能性を検討した。緻密な複合材料を作製することができ、生成相や組織などを調べた。生成物は、X線回折装置、SEM、ビッカース硬度測定装置および三点曲げ試験機などにより評価した。また、収録した合成時の温度プロフィールを現有装置を用いて解析し、合成機構と組織及び物性の関係について考察を行った。
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