研究概要 |
本年度では、チオキサンテン-S,S-ジオキシドの3,6位に導入する置換基として、ニトロ基(σ_p^-=1.23)のほかにシアノ基(σ^p^-=0.99)、カルボメトキシ基(σ_p^-=0.74)、フェニルアゾ基(σ_p^-=0.7)を選び、3,6位の置換基としてそれらの種々の組み合わせの誘導体を合成した。その結果、ジニトロ体ならびにモノシアノモノニトロ体など大きなσ_p^-値を有する置換基を導入したものにおいて加圧による9位のプロトン放出が起こり、ピエゾpka応答とピエゾクロミズムを示すことを見いだした。さらに、新規な知見としてフェニルアゾ基を有する置換体においては、光照射によるアゾ部位のトランス/シス異性化に対応してプロトン解離の程度が変化すること、すなわちpkaの光制御が可能なことを見いだした(光化学討論会 予稿集p.389 1994大阪)。 これらとは別に、クロモトロピック現象について、フォトクロミズムに関する研究も展開し、1,4位にメチレン架橋を有するアントラキノンにおいて、光水素移動に基づくフォトクロミズムが観測され(chem.Phys.Lett.,220,219,1994)光発色体の速度論的安定性が大きいことを見いだした(日化会第69春季年会、2H929)。また、3個のt-ブチル基を有するベンゾ[c]チオフェンにおいて、4,5,6-置換体において光バレン化、4,5,7-置換体において光デュワ-化に基づく光応答性を示すことを見いだした(Tetrahedron Lett., in press)。
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