研究概要 |
本研究では、ベンゼン環部の水素をすべてフッ素で置換した光学活性化合物1および2を合成することに成功し、それらをあたらしい不斉認識剤、不斉反応剤などに用いることができるかどうかについて検討した。化合物1はペンタフルオロベンズアルデヒドから、3工程でまずラセミ体2a(X=O)を合成し、次に、カンファースルホン酸で光学分割した。絶対配置をX-線構造解析で決定した。また、この反応経路を応用すれば、1、2-ジオール体も収率よく合成できる事が分かった。それを、さらに、1、2-ジアミン体2bに変換することも検討している。化合物1は電子欠損ベンゼン環を持つため、電子豊富な官能基と、ルイス酸-ルイス塩基の関係で相互作用し、それを鍵とした不斉認識が可能と考えられる。実際、化合物1をα-ハロカルボン酸存在下にFNMRを測定すると、ペンタフルオロフェニルのフッ素部分に著しい変化が見られた。化合物2a(M=BH)は,1(X=O)にBH_3-THFを作用させると、結晶として生成した。これは、新しいキラルルイス酸として興味が持たれる。ケトンを対象にその還元能力について検討した所、不斉還元ができることが分かった。以上のように本研究では、新しいキラルフッ素化化合物の合成に成功しており、その物理的、化学的特性を今後ひき続き明らかにしていきたい。
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