研究概要 |
乳化型液膜による物質輸送は分離速度が速いが,安定な液膜の開発が工業化への条件になる。多鎖型の機能性界面活性剤は,機械的強度の強い乳化液膜(W/O/W型の乳化液)を形成し、輸送のキャリアーとしても機能することが期待される。昨年度のレゾルシン系カリックス[4]アレンによるCs^+の乳化型液膜輸送へ応用に続いて,今年度はコンプレキサン類と大環状ポリミンに2〜4本のアルキル鎖を導入して,Cu^<2+>あるいはアニオン種の乳化型液膜輸送への応用を中心に検討した。 直鎖状および環状多鎖型コンプレキサンは,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,あるいはシクラム(1、4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)に,2-ブロモドデカン酸を反応させ,また環状多鎖型ポリミンは,シクラムにハロゲン化アルカンを作用させて合成した。これら2〜4本鎖の環状多鎖型界面活性剤はトルエンに対して乳化能を示し,安定なW/O/W型の乳化液膜になった。多鎖型コンプレキサンによる輸送では,金属イオンにCu^<2+>を用いた。コンプレキサン系でも,アルキル鎖長16以上の2鎖型あるいは3鎖型にすることにより単独・少量の使用で安定なW/O/W乳化液膜が得られ,外部水相中のCu^<2+>を7〜12分/回の割合で内部水相へ連続輸送することができた。また,環状および直鎖状多鎖型ポリアミンは,ピクリン酸,Br^-などアニオン種の乳化型液膜輸送剤として機能した。
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