これまでにo-アミノフェニル基をペリ位にもつポルフィリンを得、このアミノ基をかいして直鎖および環状のペルフルオロアルキル基の導入に成功している。それぞれについて、シスとトランスのアトロプ異性体を分離し、分光学的挙動を明らかにした。さらに、二官能性ペルフルオロ化合物とo-アミノフェニルポルフィリンとの反応から、ペルフルオロアルキル基で架橋された、2:2の対面型の二量体を合成した。得られたポルフィリンのうち、トランス型ポリフィリンからは、対応する鉄ポルフィリン錯体が得られたが、シス異性体についてはさらに検討を要すことが判った。今後は鉄の導入法を改良すると共に、これらのポルフィリン錯体の酸素運搬能を評価する。実際には、分光光度計を用いて酸素平衡曲線を測定し解析することにより行い、溶媒の種類、共存させる塩基の種類と濃度、および温度との関係などについて明らかにする予定である。 これら合成したポルフィリンの分光学的挙動を明らかにしていく中で、大変興味あるポルフィリンのフォトクロミック性を見い出した。すなわち、ある波長の光を照射すると本来の赤褐色の溶液から黄色の溶液に変化し、さらに、熱によりもとの赤褐色の溶液に戻るというものである。この色の変化は、繰り返し起こることも同時に明らかにした。これらの挙動についても、上記の酸素運搬能の評価と同時に検討していく予定である。
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