研究概要 |
本研究は新規な9員環骨格を有するXeniaジテルペノイドを生合成類似の経路で位置・立体選択的な合成することを目的とするが、その実現のためには炭素鎖のC-2位への選択的なカチオン種の形成と引き続く末端二重結合との間での求電子的環化が不可欠である。本研究ではセレノキシドのプンメラ-反応により生成するセレノニウムイオンの求電子性に着目し、セレノキシドとアリルシラン類からのプンメラ-型α-アリル化反応を環化のモデル反応と位置づけて種々の検討を行った (1)光学活性アルコール(lーメントール)より得られる2-フェニルセレネニル酢酸l-メチルのmCPBA酸化により相当するセレノキシドがほぼ単一の結晶として単離された。従ってlーメンチル基等による立体保護が隣接するセレノキシドの安定化に有効であることが明らかとなった。 (2)(1)で得られるセレノキシドに対しジクロロメタン中0℃で求電子試薬(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体または無水トリフルオロ酢酸)とアリルトリメチルシランを作用させ、中程度の収率で相当するα-アリル化生成物(2-フェニルセレネニル-4-ペンテン酸lーメンチル)を約1:1のジアステレオマ-混合物として得た。 (3)上記のセレノキシドと2-トリメチルシリルメタクリル酸エチル、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を用いて同様の反応を行った場合には加熱をすることにより相当するα-アリル化生成物が収率良く得られた。一方、γ-位に置換基を有するアリルシラン類を用いた場合には目的とする反応は進行せず、複雑な混合物を与えた。またアリルトブチルスズを用いた反応において同様のα-アリル化生成物は得られたが、有機スズ化合物の混入のためにその精製は困難であった。 (4)上記のα-アリル化生成物はmCPBAによりセレノキシドのayn離脱を経由して容易にオレフィン化を起こし、ほぼ定量的にα,β,γ,δ-不飽和エステル((2E)-2,4-ペンタジエン酸lーメンチル)を与えた。従って、本アリル化反応が新規な酸素鎖伸長反応として有機合成的に有効であることが明らかとなった。
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