研究概要 |
非ポルフィリン金属錯体の基本配位子の設計として中心にピリジン骨格を置くオキサゾリン誘導体を合成した。金属としてルテニウムを選び得られた化合物はX線結晶解析を行ない構造決定した。ピリジン三座配位子は強固に配位していることが判明した。他の配位子として塩化物イオン、一酸化炭素、エチレンを選び合成した。酸化反応系において設計合成したピリジンオキサゾリン-ルテニウム錯体は、エポキシ化および開裂作用を示したが選択性には欠しかった。ついでジアソ酢酸エステル、マロン酸ジアゾ化合物との反応から安定なカルベン錯体を単離することに成功した。ポルフィリン系でも最近同じ反応が報告された。金属上のカルベンユニットは、スチレン中加熱することによりスチレンへ移動することが分った。通常5配位錯体ではオレフィンメタセシスが起るはずであるが、観察されなかったことより6配位カルベン錯体の特徴と考えられる。カルベン移動から得られた多フェニルシクロプロパンカルボン酸誘導体のトランスニシス比は99%以上であり高選択的な系であることも分った。配位子がキラルであるため不斉誘導を測定したところ95%ee以上であり、本錯体モデル反応は、不斉シクロプロパン化の機構の段階的な証明ということができる。カルベンユニットは核磁気共鳴スペクトルにてプロトンおよび^<13>Cとも低磁場にシグナルが観測された。X線解析ができなかったものの大変貴重なデータであり興味深い。以上のように、合成の難しいポルフィリンを簡素化したピリジンシステルにて錯体レベルと反応レベルにおいて、非ポルフィリンシステムを開発できたと考えている。さらに,ピリジン骨格の修飾から得られる4-カルボニル誘導体の高活性作用を見いだした。今後の誘導体の合成への展開が期待できるとともに、当初の目的をほぼ達成できたことは有意義であったと考える。
|