研究概要 |
まず、ジビニルジシランとジフェニルホスフィンの光反応により、ホスフィン配位子を側鎖として二つ持つジシラン(1)を合成した。次に、上記の方法により合成したジシラン(1)とパラジウム(0)錯体との反応を試みた。パラジウム(0)錯体としてPd2(dba)3・CHCl3を用いたところ、まず配位子交換によりジシランがパラジウムの配位圏に近づき、続いて酸化的付加反応によりビスシリルパラジウム錯体(2)が得られた。分光学的同定、さらに単結晶を得てその結晶構造も明らかにした。ビスシリルパラジウム錯体(2)を用いてアルキン(3)との反応を行ったところ、ビスシリル化が進行して(ビスシリルアルケン)パラジウム錯体(4)が得られた(過程B)。これもX線回折法により結晶構造を明らかにした。さらに、(ビスシリルアルケン)パラジウム錯体(4)にジシラン(1)を作用させると、ビスシリル化生成物(5)が遊離し、ビスシリルパラジウム錯体(2)が再生することを見いだした(過程A)。本研究により、A,B両過程が実験的に確認され、これまで提唱されていた触媒反応機構を強く支持する結果が得られた。
|