研究概要 |
イミンへの求核的付加反応の立体化学制御と触媒的不斉合成について検討した結果以下の事実が明らかになった。 1.イミンへの求核的付加反応の立体化学制御:(S)-Ethyl lactateから得られるN-ベンジル-α-シロキシアルジミンにRLi (R=Bu,Me)を反応させたところ,Threo体のβ-アミノアルコールが選択的に得られ、RCu・BF_3及びR_2CuLi・BF_3(R=Bu,Me)を作用させたところ、100%Erythro体が得られることが明らかになった。さらに、(R)-Ethyl mandelateから得られるN-トリメチルシリル-α-シロキシアルジミンにRLi (R=Bu,Me)を反応させたところ、Threo体のβ-アミノアルコールが選択的に得られ、RCu・BF_3 (R=Bu,Me)を作用させたところ、100%Erythro体が得られることが明らかになった。この様に、容易に反応試剤を変える事により同じ出発物質から立体化学の異なるβ-アミノアルコールを合成することが可能になった。以上のようにリチウム試薬を用いた場合と有機銅-BF_3試薬を用いた場合とでは、その選択性に著しい相違が見られたことは注目すべきことである。リチウム試薬の付加はCyclic Cram modelで、一方有機銅-BF_3試薬の付加はFelkin-Anh modelもしくはOpen chain Cram modelを考えることにより実験事実をうまく説明することができる。 2.三塩化ビスマス-亜鉛存在下、アリリックハライドを用いるイミンのアリル化反応:ビスマスとアリルブロミドを用いるイミンのアリル化反応を種々検討したところ、三塩化ビスマス-亜鉛存在下、イミンと2当量のアリルブロミドをアセトニトリル中60℃で反応させると対応するホモアリルアミンが収率よく得られることが明らかとなった。この反応をクロチルブロミドを用いて検討したがジアステレオ選択性はほとんど見られなかった。さらに光学活性イミンを用いて、反応の立体選択性を検討した。アリリックハライドとして4-ブロモクロトン酸エチルを反応に用いたところ、室温で容易に反応が進行し、β-アミノエステルが収率よく得られた。 3.ビスマス化合物を触媒とするイミンのシアノ化反応およびその不斉合成への展開:触媒量の三塩化ビスマス存在下、シアノ化剤としてトリメチルシリルシアニドを用い、これをイミンと反応させると対応するα-アミノニトリルが収率よく得られることが明らかになった。この反応を不斉合成に展開すべく、まず光学活性イミンを反応基質に用いてジアステレオ選択的にシアノ化反応について検討したが、良好な結果は得られなかった。次に光学活性酒石酸ジエチルエステルから調製した不斉ビスマス触媒を用いてエナンチオ選択的イミンのシアノ化反応を検討したところ、不斉シアノ化反応が惹起することが明らかになった。
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