研究概要 |
平成6年度はエチレンビステトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド-メチルアルモキサン触媒により得られる末端にビニリデン結合を有するアイソタクチックポリプロピレン(iso-PP)を利用して,A-B型のブロック共重合体を合成した。すなわち,末端のビニリデン結合をBH_3・Me_2Sによりヒドロホウ素化した後BrMg(CH_2)_5MgBrと反応させることにより末端Grignard化iso-PPを合成し,これをアニオン重合開始剤としてMMAの重合を行うことによりiso-PP-block-PMMAを得た。 本年度はこの手法をA-B-A型のブロック共重合体の合成に応用するために,ポリマー鎖の両末端にビニル基を有するiso-PPの合成について検討した。最も代表的なアイソ特異的重合触媒であるTiCl_3-AlEt_2Clによるプロピレン重合においてはZnEt_2が連鎖移動剤として有効に働き,末端亜鉛化iso-PPが生成する。我々は先にこのZn-ポリマー結合をN-メチルイミダゾール共存下で臭化アリルと反応させることにより,ほぼ定量的に末端ビニル結合に変換できることを報告した。そこで,ビス(7-オクテニル)亜鉛(BOZ)およびビス(3-ブテニル)亜鉛(BBZ)を合成し連鎖移動剤として用いることにより,開始末端にビニル基,停止末端に亜鉛を有するポリマーの合成を試みた。 BBZ,BOZいずれもTiCl_3と組み合わせることにより,プロピレンの重合が進行し,融点約160℃のiso-PPが得られた。また,BBZおよびBOZ濃度の増大に伴いポリマー鎖数が増大することから,これらが連鎖移動剤として作用していることが示唆された。加水分解後のポリマーをNMRにより解析した結果,BOZで得られたポリマーにはビニル基とともに,BOZの共重合により生成すると思われるn-ヘキシル側鎖の存在が確認された。一方,BBZで得られたポリマーにはビニル基は存在せず,その原因はBBZでは重合開始時にプロピレンが1つ挿入した後に5員環構造に環化してしまうためと考えられる。加水分解前に臭化アリルと反応させた場合には,いずれのポリマーにおいてもビニル基の導入が認められた。NMRによる構造解析の結果,BBZで得られたポリマーには停止末端に,また,BBZで得られたポリマーには開始・停止両末端に加え側鎖にもビニル基が導入されていることが明らかとなった。
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