金属イオンに選択性の高いイオン交換樹脂の合成法として、鋳型重合が注目を集めてきた。しかし、これまでの方法はいくつかの問題を抱えており、実用には至っていない。本研究では、鋳型重合法における全く新しい手法を提案し、実用上の諸問題を抜本的に解決することを目的とした。すなわち、表面に金属配位性官能基を有する高分子ミクロスフェアを合成し、この表面官能基を金属イオン共存下に自発的に再配列させ、目的イオンに適した樹脂表面構造を構築しようとする試みである。 表面にカルボキシル基を持つ樹脂は、筆者らの研究室で既に確立した手法により合成した。その後、樹脂を膨潤させた状態で表面カルボキシル基を銅などの金属イオンと錯形成させた。この状態で、樹脂を膨潤させるために用いた溶媒(ジビニルベンゼンモノマー)を重合させ、表面官能基の位置を固定化した。この手法により、鋳型金属に対する再吸着性の高い樹脂が合成できることが明らかになった。 以上は、銅、ニッケル、亜鉛、コバルトなどのイオンに対する結果である。一方、資源・エネルギー問題に関連して希土類金属イオンやウラニルイオンも重要であり、現在までに鋳型形成処理をする前のカルボン酸型樹脂について基礎的データを集積した。第2年次は、これら金属イオンについても、樹脂表面鋳型形成法の有効性を確かめていく。
|