研究概要 |
目的 髪や羊毛から抽出したケラチン蛋白質について自己組織化(リ-ホールディング)による高次構造物の構築を試みること.また,形態と調製条件との関連や生体材料としての機能等について研究すること. 実験(1)ケラチン:われわれの既報による方法で髪と羊毛より抽出した.これは分子量が約40,000と60,000を主とする毛繊維蛋白質と分子量20000以下の毛繊維間に存在する細胞間蛋白質の混合物である.また,毛繊維蛋白質を主に含む水溶液は分子量25000でカットする透析幕を利用して調製した. (2)自己組織化:純水または種々の緩衝液に約1-3重量%の上記ケラチンを含む水溶液を用意して,硝子シャーレまたはポリスチレンシャーレに0.5-2.0mg/cm^2になるように置き,室温でゆっくり水分を蒸発させて濃縮した.乾燥後,位相差倒立顕微鏡や走査電子顕微鏡で膜表面の形状を観察した. (3)自己組織化ケラチン蛋白質膜上での細胞培養への影響をコラーゲン膜と比較しつつ,マウス繊維芽細胞(L929)を用いて調べた.また, (4)自己組織化による膜の引張強度への効果についても膜引張強度の自己記録計により調べた. 結果(A)ケラチン水溶液の単純な濃縮によりケラチン蛋白質は水に不溶性の透明膜を与え,顕微鏡観察により直径約4-5umの繊維構造を有することが判明した.しかしながら,本構造は同じ条件で行なった場合でも再現されることが少なく,塩濃度やpHの効果について検討を重ねた.ケラチンは上述のように複数の蛋白質より成っているので,成分の同一化が抽出実験によっt微妙に異なるので,再実験可能なリホールディングについて条件の検索を重ねている. (B)細胞増殖性:ケラチンそして分子量25000以上のケラチンはコラーゲンとほぼ同じ増殖性を示した.分子量25000以下のものは単位面積あたりの蛋白質量が増えると細胞の増殖性が低下した. (C)引張強度:分子量25000以上のケラチン膜はトータル・ケラチン膜に比べ約50%の伸度しかなく,また最大破断強度は2倍であった.
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