研究概要 |
研究代表者らは界面活性剤の存在下にて還元反応により羊毛よりケラチンを抽出し,得られたケラチン水溶液(システイン残基が全アミノ酸残基の8-10%;分子量は40000-60000;等電点は約6)を使って次の知見を得た。 i)キャスト法で調製した膜は引っ張り強度など力学的性質に優れていた. ii)ケラチン膜はマウス皮下で生分解性された.しかし,コラーゲン膜よりは約10-20分の1の分解速度であった.トリプシンなどの蛋白分解酵素に対しても約50%の重量減少まで分解された. iii)フィルム面には走査電子顕微鏡によりミクロな繊維性の構造が見られた.膜形成を塩(NaCl,CaCl_2など)濃度とpHの加減をしながら調査したが,現在までに,コラーゲンにおいて報告されたような組織形態の変化を観察することはできていない. 当該ケラチンは高システイン濃度によるS-S結合による架橋が実験条件では無作為に進み,高度な組織を形成しながら重合しにくいこと,原料のケラチンが複数の蛋白質からなる混成体であり,調製法によりその組織も微妙に変化することなどが考えられるので,今後,ケラチンの精製を行い,ケラチンからミクロ繊維の形成を条件を変えながら研究を行っていく予定である.
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