本研究の目的は、非晶性高分子について、原子レベルでの構造解析を行うことのできる新しい固体NMRの手法を開発・提案することであった。本科学研究費のサポートによって、局所的に配向しているが、従来のX線回折による方法では非晶パターンを与える繊維状高分子、あるいは、延伸高分子膜について、局所的配向構造の解析法を同位体ラベル法と固体CP NMR法を用いて提案することができた。それは^<15>Nならびに^<13>C化学シフトテンソルが、配向軸と分子軸のなす角度に著しく依存するという原理を基礎にした。さらに、非晶である粉末試料について、異核種同位体ラベル核間の原子間距離の精密決定を通して局所構造を解析する方法(REDOR法)の開発を、フロリダ州立大学のギャリオン助教授と共同研究によって行った。以上の成果は、論文として絹関係をPolymer J.(高分子学会)、Chemistry Letters(日本化学会)、Sen-i Gakkaishi(繊維学会)に、又、ポリアミド関係をSolid state NMR、Polymer J.、Macromol.Chem.Phys.に発表した。また、総説として、新高分子実験学5巻(高分子の構造(1)-磁気共鳴、高分子学会)、高分子材料の機器分析事例集(技術情報協会)ならびにACS Symposium.Silk(アメリカ化学会)に発表した。
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