研究概要 |
或る種の微生物が産生するポリエステルは生分解性・加水分解性を示すので,注目されている。このようなポリエステルの代表例は3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシ吉草酸共重合体などの結晶性共重合体である。高分子の生分解・加水分解は非晶領域から始まると考えられているので,これら共重合体の分解性を含む物性の単量体組成依存性を研究するためには,結晶相と非晶相のそれぞれの相の単量体組成を決定する必要がある。 水素細菌Alcaligenes eutrophusを使用して発酵合成した数種類の3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシ吉草酸共重合体(3-ヒドロキシ吉草酸組成0〜約25%)の融点を示差走査熱量計(DSC)にて測定したところ,3-ヒドロキシ酪酸の単独重合体は狭幅のDSC融点ピークを示したのに対して共重合体のDSC融点ピークは著しく幅広くなった。これはこれらの共重合体が単量体組成の異なる複数の共重合体の混合物である,すなわち組成分布があるためと推定し,炭化水素/クロロホルム混合溶媒により分別を行った結果,著しく幅広い組成を持つ数成分の共重合体に分割できた。これらの成分共重合体の融点は分別前の共重合体の融点とは大幅に異なり,また本科学研究費にて購入した偏光顕微鏡により観察・決定した結晶化速度も分別前と後では著しく異なることを見出だした。Alcaligenes eutrophusにより発酵合成した数種類の3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシプロピオン酸共重合体についても結晶化挙動を調べるなど,予備的実験を行った。また3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシプロピオン酸および3-ヒドロキシ酪酸-4-ヒドロキシ酪酸共重合体の優位コンホメーションを理論計算により予測した。
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