研究概要 |
セルロース並びにキチンを一成分とする新規高分子複合体を調製し,相構造の解析及び力学・収着物性等の評価を行った。得られた主な知見は以下のようである。 1.多糖/合成高分子ブレンドフィルム (1)ジメチルスルホキシドーパラホルムアルデヒド(DMSO-PF)を共通溶媒とした溶液キャスト法により,相溶状態の良好なセルロース/ポリビニルピロリドン(CELL/PVP)ブレンド膜を調製しえた。本系では,PVP含有率の増加と共に酸素の選択透過性が顕著に上昇する傾向がみられた。一方,ジメチルアセトアミド-塩化リチウム(DMAc-LiCL)を共通溶媒に用いて溶液凝固法により製膜したセルロース/ポリビニルアルコール(CELL/PVA)系では,特に中間組成領域で二酸化炭素に対するバリヤ-性が高くなることが判った。 (2)蟻酸-ジクロロメタンを共通溶媒とし,キャスト法によって透明性の良いキチン/PVPブレンド膜を作製しえた。両成分の相溶性は良好であるが,溶解過程でキチンは化学修飾を受け,部分的に蟻酸エステル誘導体として存在することが判った。 2.相互侵入綱目(IPN)構造を有するセルロース・キチン系ミクロコンポジット セルロース(又はキチン)/DMAc-LiCl溶液を非溶剤中に凝固させて得られる多糖のゲル中に,ビニルピロリドン(VP)モノマーと架橋剤を含浸させ,紫外線照射下で塊状重合を行うことにより,IPNタイプの多糖/PVPミクロコンポジットを合成しえた。但し,PVP-rich組成では,複合体のガラス転移温度がPVPホモポリマーのそれよりむしろ低下する特異現象が観測され,多糖の水酸基とVPのカルボニル基間に介在する相互作用の及ぼす効果についてFT-IR測定により検討を加えた。また,水及び有機溶剤に対する膨潤度,並びに水蒸気収着挙動の組成依存性を評価し,IPN組織の発達と関連づけて考察した。
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