荷電高分子ゲルについて、(1)化学架橋系ゲルおよび(2)物理(イオン)架橋系ゲルの2つの系について分子間相互作用の研究を詳細に行った。 (1)イオンコンプレックス系ゲル(ICPG)の膨潤/収縮挙動と対応する高分子溶液の広がりの間の相関に関する研究について、倒立型顕微鏡および画像解析装置(H6年科研費にて購入)により、いずれもFlory-Rehner型の自由エネルギー関数で記述できることが明らかとなった。ただし、ゲルにおいては静電相互作用項だけでなくドナン膜平衡項を付与する必要があることを理論および実験的に示した。また、動的光散乱により、ゲル網目の協同拡散係数を測定した。その一方で、ゲルの膨潤収縮の速度論より巨視的な協同拡散係数を測定したところ両者に良い一致を見た。現在、イオン環境を変化させた条件下においても、ゲルと高分子溶液における分子の広がりの類似性および巨視的・微視的拡散係数の一致が普遍的に成立するかどうかを検討中である。(発表論文1、およびMacromoleculesに投稿予定) (2)ポリビニルアルコール(PVA)-コンゴ-レッド(CR)イオンコンプレックス系に熱可逆的ゾル-ゲル-ゾル-ゲル転移が存在することを見いだし、転移に伴う微細構造変化を小角中性子散乱により研究した。また同系に非常に特異的かつ上記ゾル-ゲル転移に対応する粘度が観察されたことから、粘度挙動と微細構造に関する知見をもとにイオン化した高分子系に働く相互作用について議論した。(発表論文2、3)
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