(1)イオンコンプレックス系ゲル(ICPG) ICPGの構造とレオロジー挙動の相関について議論した(発表論文1)。ICPGゲルと対応する高分子溶液の広がりをそれぞれ膨潤度、極限粘度数を用いて評価したところ、ゲルにおいては静電相互作用項だけでなくドナン膜平衡項を付与する必要があることを理論および実験的に示した。さらに、イオン環境を変化させた条件下においても、ゲルと高分子溶液における分子の広がりの類似性および巨視的・微視的拡散係数の一致が高添加塩濃度の条件において成立することを発見した(発表論文3)。動的光散乱により、ゲル網目の協同拡散係数を測定し、ゾル-ゲル転移に対応する変化が協同拡散係数にも現れることを発見した(発表論文4)。 (2)弱荷電性熱敏感型ゲル N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)にアクリル酸(AAc)を少量共重合して得られる弱荷電性熱敏感型高分子ゲルの微細構造解析を小角中性子線散乱(SANS)法により行った。ゲルと対応する高分子溶液では、NIPAのΘ高温以上において静的構造因子に大きな相違が見られた。ゲルではミクロ相分離構造が選択的に発現するのに対し、溶液ではミクロ相分離のみならずマクロ相分離も起こることが確認された。ゲルに於ける分子鎖の並進自由度の消滅によるものとして説明した(発表論文2)。また、同系について、示差走査熱分析(DSC)により脱疎水水和熱のAAc依存性および水和水分子数の定量を行った(発表論文5)。
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