研究概要 |
繊維充てん複合材料における補強繊維への応力集中,応力伝達機構,さらにその結果生じる補強効果をミクロな観点から非破壊的に検討し、大応力下での界面剥離現象など材料破壊の機構を明らかにすると共に界面の接着性との関連性を検討することを本研究の目的とした。平成6年度において,高強度・高弾性率ポリエチレンエポキシ樹脂-軸配向複合材料を測定対象とするため,申請備品であるカッターを利用して,まず試料作成法を確立した。次いで,繊維軸に対して直角方向の力学挙動についてX線的に検討を行った。外部応力は繊維/マトリックス界面で伝達され,充てん繊維のポリエチレン結晶にひずみをもたらした。このひずみはX線的に容易に検出することができ,分子鎖軸に対して直角方向の結晶弾性率を掛け合わせることで,充てん繊維に加わる応力をin situかつ非破壊で求める手法を確立することができた。さらに,繊維表面にクロム酸処理を施したところ,水との接触角が減少し,親水化された。この繊維を充てんしたところ,未処理の場合に比較して応力の伝達が良好になり,これは繊維/マトリックス界面で接着力が増大したためであることを明らかにした。また、繊維の表面処理により破壊モードが変化することをX線回折測定から示すことができた。これらの成果の一部は第43回高分子討論会,International Symposium on Fiber scienceにて学術報告を行ったところ新規な解析方法として注目を集めた。今後,測定対象を炭素繊維複合材料,また,鎖軸方向へと広げて行く予定である。
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