研究概要 |
繊維充てん複合材料における補強繊維への応力集中,応力伝達機構,さらにその結果生じる補強効果をミクロな観点から非破壊的に検討し,大応力下での界面剥離現象など材料破壊の機構を明らかにすると共に界面の接着性との関連性をX線回折法を用いて検討することを本研究の目的とした。まず,高強度・高弾性率ポリエチレン/エポキシ樹脂一軸配向複合材料を測定対象とし,繊維軸に対して直角方向の力学挙動についてX線的に検討を行った。その結果,外部応力は繊維/マトリックス界面で伝達され,充てん繊維のポリエチレン結晶にひずみをもたらし、分子鎖軸に対して直角方向の結晶弾性率を掛け合わせることで,充てん繊維に加わる応力をin situかつ非破壊で求める手法を確立することができた。さらに,繊維表面にクロム酸処理を施したところ,未処理の場合に比較して応力の伝達が良好になり,これは繊維/マトリックス界面で接着力が増大したためであることを明らかにした。また,繊維の表面処理により破壊モードが変化することをX線回折測定から示すことができた。さらに,同じ系で鎖軸方向について検討を行ったところ,繊維の表面状態ひいては界面状態には依存せず,力学物性は混合則で表されることが明らかとなった。炭素繊維充てんエポキシ樹脂複合材料,また,高性能繊維として最近注目を集めているポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維へと測定対象を広げたところ,補強繊維への応力集中,応力伝達機構,さらにその結果生じる補強効果に関して有用な知見を蓄積することができた。 今後,測定対象を広げると共に,本手法は,材料の疲労性,耐湿性,耐熱性などさまざまな評価に適用して行く予定である。
|