1.近年エコマテリアルとしてのセルロースやキチン・キトサンなどが見直され、研究が盛んとなってきた。これら多糖類の誘導体の糖単位に導入された官能基の置換度は分子ごとに異なっており、合成コポリマーにおける組成分布と同様の置換度分布が存在する。本研究は、こうした天然多糖誘導体の置換度分布を、吸着モードの高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて決定することを目的として行われた。 2.アセチルセルロースの試料は、セルロースを完全にアセチル化したものを均一系で部分的に脱アセチル化して調整した分子量は10^5のオーダーで平均置換度1.75から2.40の組成の異なるもの4種を用いた。フェニル基修飾シリカゲルカラム(phカラムと略称)を用い、アセトン/水・メタノール(3:1)の逆相グラジエント溶出により、これら4種の試料がそれぞれ整った一山のピークとして置換度の順に異なった位置に溶出することを見いだした。検出はエバボレイト光散乱検出器を用いて行ったので、その検出感度の試料の組成に対する依存性を現象論的に検討し、濃度への換算式を導いた。それと、溶出位置の組成依存性の関係とを用いて、回帰計算により、定量的な置換度分布曲線を決定した。 3.メチルセルロースは、市販の試料を不均一系で更にメチル化を行い、分子量が10^5のオーダーで平均置換度2.3から2.8の3種のクロロホルム可溶な試料を得た。これらの試料は、phカラムを用いクロロホルム/メタノールの逆相グラジエントにより、置換度の低いものから溶出することを見出し、アセチルセルロースの場合と同様の方法で置換度分布を決定した。 4.カルボキシメチルセルロースや脱アセチル化キチンの置換度の異なる試料を調整し、現在、HPLCの分離条件を検討中である。
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