研究概要 |
成膜条件を変えることにより物理的,化学的構造の異なるキトサン(chito)膜,ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP)膜,メチルメタクリレート-ジメチルシロキサン(MMA-g-DMS)膜を調製した。これらの膜のアルコール水溶液の透過分離特性が有機液体混合液の膜透過法の一つである浸透気化(PV)法や申請者らが考案した気化浸透(EV)法,さらに気化浸透法を基にして改良した温度差制御気化浸透(TDEV)法を用いて透過条件(供給液組成,透過温度など)を変えることにより検討された。 chito膜ではPV法,EV法共に水選択透過性を示したが、その選択性はEV法の方が高く、また膜の水素結合に基づく親水性基の遊離度に著しく依存していた。PDMS膜ではPV法でエタノール選択性を示し,さらにTDEV法に適用すると供給液と膜周辺との温度差が大きいほど高いエタノール選択透過性を示した。PTMSP膜は,PDMS膜と同様にPV法,TDEV法でエタノール選択透過性を示したが,透過速度およびエタノール選択透過性共にPDMS膜のそれらより高い値が得られた。また,膜厚を減少させると透過速度は大きく増大するが,エタノール選択性には変化がみられず優れた膜性能が確認された。MMA-g-DMS膜のPV実験ではDMSユニット含有率により選択透過性が著しく異なった。すなわち,DMSユニット含有率が約36mol%以下では水選択透過性となり,それ以上になるとエタノール選択透過性となった。この選択透過性の相違はMMA-g-DMS膜の相構造の相違によることが熱分析測定や透過型電子顕微鏡観察からも明らかにされ,さらに透過の理論式からの解析からも考察づけられた。
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