研究課題/領域番号 |
06651064
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研究機関 | 高エネルギー物理学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 健訓 高エネルギー物理学研究所, 放射線安全管理センター, 助教授 (40162961)
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研究分担者 |
沼尻 正晴 高エネルギー物理学研究所, 放射線安全管理センター, 助手 (20189385)
沖 雄一 高エネルギー物理学研究所, 放射線安全管理センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー物理学研究所, 放射線安全管理センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー物理学研究所, 放射線安全管理センター, 教授 (20004434)
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キーワード | 陽電子消滅 / 高分子 / エポキシ樹脂 / ビスフェノールAヂシアネート / 硬化過程 / ガンマ線照射効果 / 陽電子照射効果 / ポリプロピレン |
研究概要 |
陽電子消滅の手法を用いて、エポキシ樹脂(ビスフェノールAヂシアネート、BADCY)の硬化過程の実験を行った。この樹脂は室温で粉末、77℃で液体になり、さらに、高温で個体になるという3種類の状態変化を経る特殊な樹脂である。 この樹脂の硬化過程において、モノマーが重合して高分子になり、重合度が50%以上になると、比容積が0.5%程度増加することが既存の熱力学的手法で求められている。一般的な硬化過程では、硬化の進行とともに樹脂は液体の状態から個体になり、比容積は減少する。ところが、BADCYは50%以上の硬化過程において通常とは異なる変化を示しており、これが陽電子消滅の実験ではどのように測定されるのが興味があった。 BADCYの陽電子消滅を測定した結果、寿命は粉末から液体になるに従い増加し、液体では一定になり、さらに進むと寿命は短時間増加することが分かった。その後、重合がさらに進むと、寿命は急激に減少する。50%程度の重合が進んだ段階で、既存の方法で観測された比容積の増加は約0.5%にすぎないが、これに相当する寿命から求められた高分子間の体積の増加は約10%にもなる。以上の結果を陽電子消滅の国際会議において発表し多くの興味を引いた。 さらに、ポリプロピレン(PP)のガンマ線と陽電子照射による照射硬化について検討した。PPは陽電子消滅の実験の際に、プローブである陽電子の照射の影響を受ける。この照射は10時間ぐらいで長寿命成分の強度を4%ぐらい減少させ、無視出来ない影響を与える。この根拠についてはまだ十分には分かっていないが、ラジカルの影響と荷電の影響とが考えられ、今後の課題として検討していきたい。
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