研究概要 |
硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、アルミニウム、マグネシウムおよび末端水酸基化ポリブタジエンバインダーから成る無汚染固体ロケット推進薬を14種類試作した。この推進薬の燃焼試験および燃焼後の残留物の分析から、燃焼の際に起る化学反応が検討され、以下の結果が得られた。 アルミニウムの一部をマグネシウムに置き換えた場合には、このマグネシウムはアルミニウムの酸化を促進し、さらに過酸酸アンモニウムから生成した塩化水素を中和する。この化学反応は次の二段階反応で進行する。 MgO + Al_2O_3 → MgAl_2O_4 (1) MgO + 2HCl → MgCl_2 + H_2O (2) Mg(OH)_2 + 2HCl → MgCl_2 + 2H_2O (3) すなわち、第一段階で生成した酸化マグネシウムと酸化アルミニウムが反応する。続いて、過剰の酸化マグネシウムが存在すると、(2)および(3)式により酸性ガスの中和が起る。この結果から、塩化水素ガスを生成しない固体推進薬の組成は(1)〜(3)式を用いて、過塩素酸アンモニウム,アルミニウムおよびマグネシウムの比を求めることにより決定できることが判った。 このようにアルミニウムの代わりにマグネシウムを用いた場合に、燃焼速度や燃焼熱などの燃焼性能は従来の固体推進薬と比較しても低下せず、むしろアルミニウムの酸化率の向上などにより高性能化した。
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