研究概要 |
本研究は境界層遷移についての基礎研究であり,特に乱流コンタミネーションはそれ自身乱流の芽が生まれる過程であることから乱流機構を明らかにする上でも重要な問題として捉えられる.コンタミネーションの機構について普遍的な成果を得るためには基本的な流れと攪乱の組み合わせが重要であり,前年度から,粘性効果の大きな低レイノルズ数の平板上境界層に注目し,線形安定理論による臨界レイノルズ数以下の領域に開けられた小孔から強いヘアピン形状の渦を励起し,乱流構造が生まれる臨界条件やその過程を調べている.今年度もそれを継続し,低レイノルズ数でのラテラル乱流コンタミネーションの特徴と機構を実験的に詳細に調べた. その結果,初めに励起したヘアピン渦の流下と共にその背後(脚の部分)や横でヘアピン渦のリジェネレーションが始まり乱流構造が発達していく様子や,また,この低レイノルズ数の遷移過程においては,スパン方向への乱流コンタミネーション(いわゆるラテラルコンタミネーション)が非常に弱く,前縁からの距離に基づくレイノルズ数がRx=5×10^4〜1.5×10^5の範囲では乱流域のスパン方向の拡がり角(半角)が2〜2.5度しかなく,Rx=1.5×10^5〜3×10^5になると5度程度に増し高レイノルズ数における乱流楔や乱流斑点の拡がり角(半角)の値10〜12度に急速に近づいていく,などの興味ある結果が得られた.
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