研究概要 |
ミクロ経済的要素だけを明示的にモデル化することでマクロ経済挙動を自律的に生成する人工生命型経済モデルの構築と,それをベースにした交通需要予測手法の開発を目的として,今年度は経済・輸送需給モデルのプロトタイプの構築を行った.その結果として得られた新たな知見は以下の通りである. 1.人工生命型経済モデルおよび輸送需給モデルの基本構造 輸送対象として中間需要財(原料)と最終需要財(消費財,投資財)とを考えることで,経済・輸送需給モデルを構成する経済主体を派生的に同定することができた.各経済主体のミクロ経済的活動のモデリングの方法としては,オブジェクト指向の概念が有効であることがわかった. 2.進化的アルゴリズム 経済主体の挙動を明示的に記述する場合,最適性を勘案した上で各経済主体が採る戦略のモデリングが必要となる.その方法として,模倣と突然変異を中心とする遺伝的進化アルゴリズムが有効であることがわかった. 3.挙動分析 提案モデルの妥当性は,経済理論の裏付けが確認された後は,複雑系に対する唯一の分析手法であるシミュレーションを用いる外ない.リカードの比較優位の法則の例題について人工生命型経済モデルを構築し,シミュレーションを通して検証を行った.その結果,その法則を支配する中心原則は,生産性ではなく国際為替であることを確認した.
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