本研究の初年度(平成6年度)には、圧電効果を持つ強誘電性高分子材料を用いた同軸ケーブルと同形のケーブルセンサの試作を目的とした2次元波動解析と出力電圧に関する解析を行った。これにより、少なくともケーブル単位長当たり(1cm)、10^<-6>〜10^<-4>Vオーダの出力電圧が得られると推定した。 2年目(平成7年度)には、圧電効果を持つ高分子材料のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、長さ130mmのケーブルセンサを試作し、出力感度試験と出力波形のスペクトル解析を行った。その結果(1)出力電圧は、例えば350m/s^2の加速度が与えられたとき、10^<-1>Vオーダの値となり実用上十分な感度を持っている。(2)スペクトル解析結果によると、卓越周波数は2.5KHzであり、センサの周波数特性は約2KHzである。等のことが確認された。 平成7年度には、上記の研究と平行して市販の犯罪用ケーブルセンサを「岩盤破壊音や崩壊音のモニタリングに利用出来ないか」との観点から、Stellar System(社)製の静電気ノイズ(トライボ効果)を利用したケーブルセンサの特性試験と応用に関する試験を行った。その結果、高い測定精度が要求されない場合には、加速度計の代替センサとして用い得ることが明らかになった。また、このケーブルセンサを建物の床面に格子状に敷設することにより、床面へ与えた震動源の位置標定が可能であることがわかった。 以上、既存のケーブルセンサは、単なる防犯用センサ以上の性能を有しており、岩盤斜面の破壊音や小崩壊音の震源を2次元的に位置標定出来る可能性がある。岩盤崩壊の予知等に対して有効なセンサであるため、実用化へ向けての早急な検討が必要と考えている。
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