現在、鉄酸化細菌(T.ferrooxidans)を用いた黄銅鉱の浮選精鉱のバクテリアリーチングが検討されており、初期段階において浸出速度が速いが、徐々に浸出速度が低下し、銅が十分溶出しないことが報告されている。この原因として、鉱物の酸化にともなう鉱物表面での硫黄の蓄積やジャロサイトの生成等のほかに、バクテリアの代謝産物(排出物)の蓄積による増殖阻害が考えられている。自然界においては、他の微生物の代謝産物を栄養源として有効に利用できる微生物が生息し、微生物間に共生関係が成り立っている場合が多い。本研究では、窒素固定菌をとりあげ、窒素固定菌により鉄酸化細菌の代謝産物を分解・消化させ、黄銅鉱浮選精鉱のバクテリアリーチングの促進を試みるものである。そのため、本年度は、T.ferrooxidasと共生可能な窒素固定菌の探索および馴養の可能性について検討した。 T.ferrooxidansによるバクテリアリーチングはpH2付近で行われており、まず窒素固定菌Beijerinckia indica(ATCC9540)を用いて、その生育におよぼすpHの影響について検討を行った。pH3.0では、窒素固定菌は増殖したが、pH2.5では僅かしか増殖せず、pH2.0においては全く増殖しなかった。そのため、初期pHを3.0にして1ヶ月培養した後、pHを0.1づつ下げた培地にBeijerinckia indicaを植え継ぐ操作を繰り返すことにより酸性に対する耐性を強めることを試みたが、その効果は認められなかった。
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