研究概要 |
(1)研究目的:本研究は,次世代アブレシブジェット開発の基礎研究で,速度が比較的遅い水噴流を用いて,従来の研究に欠如している水滴流生成及び水滴から氷粒への成長機構を,流体工学及び伝熱工学的実験と数値シミューレションにより明らかにすることに主眼を置いている。 (2)実験的研究:1)-75℃までの雰囲気温度が電力のみで得られる低温実験槽を試作した。観察・計測室の外径寸法は,200mm×200mm×450mmで,相対する2面は,積層ガラス板を用いた断熱透明観察窓,他の2面と上面は断熱材である。2)低温実験槽上部の注射針を利用した内径0.5mmのノズルからその先端に形成した直径1.2〜5.0mmの水滴を形成し,微風速(低温槽内の温度を均一にするための最小限の風速)下で,水滴から氷粒への成長過程を観察した。初期水滴温度を4.0〜30℃の範囲で変化させて,水滴から氷粒に成る過程をマクロレンズ付き8mmビデオカメラで観察・記録したが,水滴内部の氷の結晶がどのように成長しているかは判別できなかった。水滴内部の氷の結晶成長の様子は,7年度購入予定のスリット光学系を併用して観察する計画である。 (3)論理的研究:低温雰囲気流体として,液体天然ガス(成分:メタン,沸点:109.2K)及び液体水素(沸点:20.4K)の蒸発気体を想定し,前者では110k,及び後者では21kの低温雰囲気中で,直径が0.01ないし2.0mmの水滴が静止状態から200m/sの速度で飛翔している状態までを仮定し,水の過冷却を考慮して,水滴が凍結するまでの最小限界時間を球の非定常熱伝導の厳密解を用いてシミューレションした。その結果,水滴凍結最小限界時間は,水滴径が小さい程,飛翔速度は大きい程及び沸点が小さい低温気体程,小さいことが分かった。計算結果の一例を示すと,0.1mmの水滴が低温メタン中を100m/sで飛翔する時の凍結時間は,8.0×10^<-3>s(凍結温度:243k)必要最短距離は500mmである。
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