研究概要 |
水蒸気支援重力排油法(SAGD法)は,タールサンド層へ一対の二本の水平坑井を掘削し,上方の水平井(圧入井)から水蒸気を圧入し,その加熱が流動し易くなった重質原油(ビチューメン)を重力の作用で下方へ浸透させた後に下方の水平井(生産井)から排油する方法である。従来の水蒸気圧入法(地上から坑井を垂直に掘削し水蒸気を圧入する方法)ではビチューメンの商業生産が困難なタールサンド層を対象としたSAGD法の縮尺模型実験を実施し,高浸透率で低粘性の均質な重質油層におけるSAGD法の縮小実験手法を確立した。とくに,SAGD法による実験を行うための二次元可視化油層模型(油層としてガラス・ビーズと高粘性モーターオイルを使用)を製作し,実験装置における坑井配置などはアサバスカ地域のパイロットテストにおける地形条件や坑井配置を考慮した状況を設定した。この実験装置を用いて,重質油の生産モデル実験を実施し,圧入井と生産井間に水蒸気のブレークスルーを生ずるまでの経過時間,圧入水蒸気量,生産排油量,凝縮水量および経済評価に重要なスチームオイル比(SOR)を測定した。本実験では,採収率が40〜50%,SORが5〜7程度の良好な値が得られた。また,実験時に水蒸気チャンバーのビデオ撮影を行い,可視化映像からチャンバー境界の凝縮水および原油の流動挙動を観察し,水蒸気チャンバー拡大の速度や形状変化さらには温度分布をサーモビュアーの画像解析から明らかにした。 次年度の研究では,重質油層に異方性を導入し,それによる排油メカニズムを実験的及び理論的に検討し,SAGD法の採収率およびSORの予測を行う。
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