本年度における研究実績の概要は次のようである。 1.圧裂引張破壊により作成した破面を乱されていない不連続面として、せん断試験を行った結果、ピーク強度を有することがわかった。小規模な弱面を多く含む岩盤はこのような乱されていない不連続面に対応すると考え、そのせん断ピーク強度は現場の岩石試料で行った乱されていない不連続面のせん断試験により求めることとした。 2.一方、小規模な弱面を多く含む岩盤のせん断残留強度は、岩盤中に含まれる小規模弱面の強度に依存すると考え、その推定を次のようにして行うこととした。乱されていない不連続面のせん断試験においてせん断変位を進行させると、表面破壊により表面特性が変化し、これにともなって残留強度も変化することから、この関係と小規模弱面の表面特性からその残留強度を推定することとした。 3.伊吹鉱山において岩石試料を採取し、上記の方法で岩盤のピークおよび残留せん断強度を実際に推定した。 4.これらのせん断強度特性を考慮し、滑りに先立って岩盤内にできる滑り面の形成を、掘削過程を考慮した応力状態に基づいて検討し、その安全率を岩盤破壊の安全率として評価する方法を提案することとした。また、これと従来の滑りの安全率を比較することにより、前兆がなく崩壊が発生する場合と、徐々に崩壊が進行する場合とが説明できることがわかった。 氷川鉱山の崩壊例について本研究の手法を適用したところ、妥当な結果が得られることがわかった。
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