研究概要 |
wx遺伝子が座乗する染色体を含めた21対の染色体のアミロース合成に対する効果を知るために,既存のCSと新たに育成した関東107号のモノソミック系統を用いた分析を行った.モノソミック系統では胚乳の遺伝子量が1/3に減少しているので,アミロース含量に影響する遺伝子が座乗する染色体のモノソミック系統は,増減いずれかの方向に偏差を示すことが期待された. 関東107号の7D染色体モノソミック系統で-5%の大きな偏差がみられ,これは唯一生産するWx-D1タンパク質の減少で説明できる.他のいくつかの系統でも±2%の範囲で偏差があったが,登熟期のばらつきが大きかったことや戻し交雑が十分でない系統が含まれたため,7D染色体以外の効果について明確な結論を下すことができなかった.CSの系統ではWx-B1遺伝子が座乗する4A染色体のモノソミックが1.7%低下し,この遺伝子がコードするWx-B1タンパク質の減少と対応した.wx座をもたない7B染色体のモノソミックで1.0%増加したが,Wxタンパク質の量とパターンに目立った変化がなかった.その一方でWxタンパク質とともにアミロース合成に関与するとみられる分子量約100kDaのタンパク質が低下していた.したがって,CS7B染色体モノソミックの行動は,先に報告したナリテトラソミック系統やダイテロソミック系統の結果(菅原・三浦,1995)と併せて考えると,短腕に座乗する遺伝子の減少で抑制効果が低下し、アミロース含量を高めたことが考えられる.
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