植物体の表皮細胞に蓄積するフラボノイド類は植物の紫外線防御に重要な働きを持つと考えられている。フラボノイド代謝経路の第一反応を触媒するカルコンシンターゼはフラボノイド合成を調節する。本研究では、暗所発芽したダイズの芽生えにおけるカルコンシンターゼ遺伝子の光、特にUV-B領域の紫外線による発現誘導を調査した。 暗所発芽の3日目から6日目の芽生えにUV-Bを含む白色光(UV-B+)とこれを含まない白色光(UV-B-)を6時間照射し、下胚軸におけるCHSmRNAの蓄積をノーザンブロット法並びにRTPCR法で解析したところ、いずれの成長段階においても光によってCHSmRNAの誘導されることが明らかにされた。またUV-B+はUV-B-に比べて非常に強い誘導作用を持ち、CHSmRNAの蓄積量において2-4倍の差を示した。このようなCHS遺伝子の紫外線誘導は発芽2日目の芽生えにおいては非常に弱く、3日目以降の芽生えにおいて特に顕著に現われる傾向がみられた。 また、遺伝子特異的な領域をPCR増幅することによってCHS遺伝子ファミリーを構成する7つの遺伝子を区別することが可能となった。UV-B照射した芽生えの下胚軸から抽出した全RNAから遺伝子特異的な領域をRTPCRによって増幅したところ、UV-B特異的に発現量の増大する遺伝子は一つではなくむしろ光によって誘導される遺伝子は全てがUV-Bによる影響を少なからず受けることが示された。なかでも第5及び第6遺伝子はUV-Bによる影響が最も顕著であった。
|