植物体の表皮細胞に蓄積するフラボノイド類は植物の紫外線防御に重要な働きを持つと考えられている。これまでに、ダイズにおいてはこのフラボノイド代謝経路の第一反応を触媒するカルコンシンターゼ(CHS)をコードする7つの遺伝子のうち紫外線によって発現調節を受けるものが5つあることを同定した。本年度の研究では、これらのCHS遺伝子のプロモーター強化を計るための基礎実験として、リポーター遺伝子を利用したプロモーター機能の解析を行った。その結果、第1遺伝子のプロモーターは表皮組織で働き、かつ地上部に特異的なプロモーター機能をもつことが判明した。しかしながら、紫外線応答機能や、第5遺伝子のプロモーター機能に、mRNAの蓄積量による昨年度の解析と一見矛盾するような点もあり、今後の検討を要する。 遺伝子の発現量を増大するための方法にはプロモーター機能を強化する方向と供にプロモーターに作用して遺伝子発現を促す分子的機構を改変する方向が考えられる。そこで、CHS遺伝子の転写開始に直接関わる転写因子に注目した。特に、トウモロコシにおけるMYB相同性因子Pはフラボノイド合成経路の酵素遺伝子群を活性化する因子であり、プロモーターDNA上の配列CC (T/A) ACCを認識することが明らかにされているが、丁度これと同じ配列をもつH-boxが紫外線によって発現調節を受けるCHS遺伝子のプロモーター領域にも共通して見い出される。本実験ではP因子に相当するMYB相同性因子をダイズにおいて探索した。その結果、16種の関連分子種の存在が同定され、その中には紫外線UV-Bにより発現量の増大する遺伝子の断片とみられるものがいくつか見つかった。これらのMYB相同性因子がUV-BによるCHS遺伝子の発現調節に関わっている可能性があり、その機能を解決することが今後の検討課題である。
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