1.体細胞胚の乾燥耐性の機構を明らかにするため、ABA処理により乾燥耐性を獲得したナタネ、白菜の花粉由来胚についてナタネ種子胚のLEA遺伝子であるLEA76をプローブとしてノーザン分析を行なった。両種とも乾燥耐性胚についてのみLEA遺伝子の発現が認められた。次に乾燥耐性胚からcDNAライブラリーを作成してLEA遺伝子の単離を行なった。ナタネ、白菜でそれぞれ3個のクローンを単離し、それぞれ1クローンについて塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列を決定したところ、アミノ酸配列についてLEA76とナタネでは95%、白菜では70%の相同性があることが明らかとなった。また、ナタネ、白菜、ブロッコリーのゲノムDNAについてサザン分析を行なった結果、LEA76は3種の間でRFLPを示し、それぞれゲノム内に1〜2コピー存在することが明らかとなった。現在、ゲノムライブラリーからの遺伝子の単離を試み、数個のクローンが得られており、プロモーター領域の同定と構造解析を行っている。 2.乾燥系人工種子としての実用化をはかる目的で、乾燥胚の貯蔵性について検討したところ、-20℃および-80℃の低温条件下で1年6カ月間貯蔵した後でも、植物体再生能を保持していることが明らかとなり、乾燥耐性胚は長期貯蔵性があることが示唆された。
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