ダイズとツルマメを区別する諸特性について、種子成分を含めて多くの形質について調査研究を行ったが、成分については特段に注目すべきものは未だ見出されなかった。しかし、開花後に茎葉から種子へ成分が移行する段階で野生種(ツルマメ)と半野生種(G. gracilis)と栽培種との間では、移行成分量や相対比率等でそれぞれが典型的に異なることが明らかになった。 全国各地で生育調査したツルマメ系統の生育密度のデータに基づいて、我が国におけるツルマメの分布の北限と南限の推定を行い、北海道の南部と九州の内部がそれに当たるとの結果を得た。また、全国各地で収集したツルマメ系統を栽培し、30形質の調査を行っていたデータに基づいて主成分分析法を適用して、生態型の分化があるかどうかを調べた。その結果、少なくとも関東以北のタイプと関東以南のタイプが明確に分かれることが明らかとなった。 本研究の過程でツルマメに見いだした、クニッツ型トリプシン・インヒビターの新しい多型(T ia-s)を取り上げ、その遺伝子をDNA塩基配列が明らかにされている(T ia)遺伝子の上流下流の20塩基配列を人為合成したプローブを基にPCR法で変異遺伝子を増殖単離して、それについて合成停止法を用いて塩基配列の同定を行った。その結果、変異遺伝子はリーダー配列部分に塩基の挿入変異と構造遺伝子配列部分に1塩基の置換変異があることが明らかとなった。その結果、180アミノ酸で構成されるクニッツ型トリプシン・インヒビターの中では1アミノ酸の置換が行われていることが判明した。
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