研究概要 |
北米のオオムギ研究者から提供された倍加半数体2組合せ各150系統とそのマーカー情報を利用して,各種有用遺伝子の染色体上のマッピングを行った. 対象形質は稈長,穂長,千粒重,出穂期のような農業上重要な形質と耐湿性,耐塩性,深播耐性,休眠性のような環境ストレス耐性,うどんこ病および網斑病に対する耐病性,ならびに種子の発芽時におけるABAに対する反応性,胚培養におけるカルスの生長と再分化能のような生理的特性である. 特性評価は平成6年と7年の2年にわたって行われ,稈長,穂長,出穂期などには年次と系統(遺伝子型)の交互作用が認められる場合もあったが,両年ともに安定して発現される形質も多かった. とりあつかった全ての形質について有意なQTLが見出され,そのかなり詳細なマッピングが可能であった.特にうどんこ病と網斑病については主働遺伝子も見出された.また,生物間情報認識分野との共同研究の結果,耐虫性にかかわると言われるグラミン合成を支配する遺伝子のファインマッピングに成功した. 深播耐性.発芽時の耐塩性,休眠性,ABA反応性など,種子の発芽にかかわる形質では第7染色体にこれらのすべての形質を支配する協力なQTLが見出され,発芽生理にかかわる共通の遺伝要因が働いていることが明らかにされた.また,発芽時の耐塩性と幼植物の耐塩性を支配するQTLは別々の座位にあり,両者が生理的にも遺伝的にも独立のメカニズムによる形質であることが明らかにされた. これらの研究は,7編の口頭発表として公表されており,順次印刷公表される予定である.
|