研究概要 |
1.低頻度での細胞集団中に存在する形質転換細胞のチミンダイマー量を測定するために,チミンダイマー特異的なモノクローナル抗体を用いたイミュノPCR法によるチミンダイマー高感度検出法を開発した. 2.イネcDNAライブラリーから分離した大腸菌光回復酵素遺伝子および除去修復酵素遺伝子のホモローグについて,紫外線照射後の発現量とチミンダイマー修復量を調べたところ,両者の間に正の相関を示すホモローグと示さないホモローグが認められた.正の相関を示すホモローグを用いて,イネ懸濁培養細胞プロトプラストにエレクトロポレーション法により遺伝子導入した.得られた形質転換細胞集団について,各種ホモローグの発現状況,UV感受性,およびチミンダイマー修復量を調査した.UV抵抗性の増加した形質転換細胞の多くは光回復酵素遺伝子ホモローグを複数コピー発現していることが明らかになった. 3.同様に,大腸菌および酵母の光回復酵素遺伝子あるいは除去修復酵素遺伝子をエレクトロポレーション法によりイネ懸濁培養細胞プロトプラストに遺伝子導入し,形質転換細胞の形質転換細胞のUV感受性,およびチミンダイマー修復量を調査した.UV抵抗性カルスは大腸菌の光回復酵素遺伝子あるいは除去修復酵素遺伝子を発現し,発現コピー数とUV抵抗性の間には相関が認められた. 4.大腸菌光回復酵素遺伝子およびホモローグからアミノ酸配列保存性の高い領域を欠失した突然変異配列を作製した.これらの突然変異配列をエレクトロポレーション法によりイネ懸濁培養細胞プロトプラストに遺伝子導入し,形質転換細胞の形質転換細胞のUV感受性を調査したところ,UV抵抗性カルスは得られなかった. 5.なお,修復酵素遺伝子あるいはそのホモローグの導入によってUV耐性の高まった形質転換細胞から植物体を再分化させる試みは現在不成功に終わっている.
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