オオムギ黄化萎縮病(BYDV)強度の抵抗性を示すA.macrostachyaはアルジェリア特産4倍性野生種である。現在、A.macrostachyaと栽培種A.strigosaの交雑を行ない抵抗性遺伝子の栽培種への導入を行なっている。具体的には、BC2世代をA.strigosaに戻し交配を行って、異種染色体の添加系統を育成している。また、栽培タバコではタバコモザイクウイルス(TMV)に抵抗性を示すオーストラリア産野生種Nicotiana gosseiを栽培タバコ(Nicotiana tabacum)の4品種に交配し、F_1の子葉培養による個体再生と髄培養による複二倍体育成に成功している。これら両作物のウイルス抵抗性遺伝子を組織培養のソマクローン変異や放射線照射とその後の戻し交配によって栽培種に導入している。その過程で得られる種々の抵抗性系統をGISH法を用いて調べ、転座部位やその大きさと抵抗性の相関関係を明らかにしつつある。両野生種は栽培種との交雑率の低さや雑種不稔性に加え雑種致死作用の発現も見られた。複二倍体や戻し交配世代の作成は胚培養、子葉培養および髄培養を駆使しなければならなかった。また、これまで真性ウイルス抵抗性遺伝子の同定や導入はまったく成功していないが、本研究によって分子マーカーがウイルス抵抗性育種の有効な指標になることが証明できることと思われる。現在は、種間交配後の戻し交配や培養植物の再生を行っていて、実験系統の育成をはかっているので、まだ具体的な成果はえられていない。
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