オオムギ黄化萎縮病(BYDV)強度の抵抗性を示すA.macrostachyaはアルジェリア特産4倍性野生種である。現在、A.macrostachyaと栽培種A.strigosaの交雑を行ない抵抗性遺伝子の栽培種への導入を行なっている。具体的には、BC2世代をA.strigosaに戻し交配を行って、異種染色体の添加系統を育成している。また、スペイン産2倍性野生種のA.prostrataはうどん粉病に強度な抵抗性を示す有用な遺伝資源である。これらのウイルスやうどん粉病菌に対する抵抗性遺伝子を組織培養のソマクローン変異や染色体対合促進遺伝子系統を利用して栽培種に導入した。その後、戻し交配によって栽培種の遺伝的背景に整えている。その過程で得られる種々の抵抗性系統をGISH法を用いて調べ、転座部位やその大きさと抵抗性の相関関係を明らかにしつつある。しかし、現在までのところ、異種染色体の挿入部分の大きさや位置は確認できるけれども、抵抗性強度との関係が明確には認められなかった。これまで真性ウイルス抵抗性遺伝子の同定や導入はまったく成功していないが、本研究によって分子マーカーがウイルス抵抗性育種の有効な指標になることが証明できたと思われる。また、これまでうどん粉病抵抗性の栽培種への導入は成功しているが、その後代での抵抗性が消失することがあり、品種育成上問題であった。しかし、GISH法の利用によってその問題が軽減されるとおもわれる。
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