研究概要 |
雨避けの簡易ビニールハウスを圃場に設置し,生育期間中全く潅水しない区(無潅水区)と週2回潅水する区(潅水区)を設け,深さ150cmまでの土壌における水分圧の推移,根の伸長最大期における根長分布,ならびに茎葉生長に及ぼす影響を調査し,下記の結果を得た. 1.土壌内における根長分布には顕著な処理間差異が認められ,無潅水区では深さ120cmまで根が伸長したのに対し,潅水区では深さ60cmで伸長がほぼ停止した.また,無潅水区では処理開始からの日数の経過に伴い,順次深い土壌層での乾燥が進み,生育中期の8月上旬以降では深さ150cmの土壌層でも水分圧が減少した. 2.無潅水区では茎葉の生長が抑制され,処理間の差異は処理開始1週間後には明瞭となり,処理開始1カ月後の生育中期における無潅水区の葉面積および茎葉乾物重は潅水区に比べ著しく小さく,特に茎乾物重での差異が大きかった. 以上のことから,バレイショは他の畑作物に比べ浅根性ではあるが,乾燥条件下では1mを越える深い土壌層からも水分を吸収する能力のあることが明らかとなった。しかし,表層の土壌が乾燥すると地上部の生長が直ちに抑制されたことから,浅い土壌層に分布する根に比べ深い土壌層に伸長した根の水分吸収能力は相対的に小さいものと考えられ、水分ストレスを起こさないためには土壌の表層に充分な水分を供給することが必要であるものと推察した.
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