研究概要 |
イネ科作物の根とくにコムギの種子根を対象に,初期生長における負の重力屈性反応やリミナルアングルと呼ばれる根が最終的にとる伸長方向が,内外の諸要因にどのように応答するかを明らかにすることによって,傾斜重力屈性の発現と制御機構の解明を試みた.また,これらの重力に対する反応が,根の形態特性とどのように関連しているかについても調査した. 1.実験室では,大気中に根を伸長させ,その幾何学的な形状から,1mmごとの根の伸長角度やその他の形態的なパラメータを抽出する必要があった.ホルダーにはさんだ発芽から伸長した根の形態を,カメラ,ディジタイザおよびパーソナルコンピュータからなる測定系を作成した. 2.上記の測定系を用いて,次の結果をえた. (1)乾燥条件は,根の重力屈性反応に影響をあたえ,下方向への根の伸長を誘導した.これは,経験的に知られている乾燥土壌中での根の反応と類似したものである. (2)初生種子根の切除を行ったところ,第一側生種子根の負の重力屈性反応が抑制され,その結果第一側生種子根はより鉛直に近い方向に伸長した.また,その際には第一側生種子根の根端の肥大がみられたことから,同化産物の分配といった内的要因が,種子根相互の重力反応性に関与していることが示唆された.すなわち,一種の補償作用が機能していると考えられる.
|