研究概要 |
イネ科作物の種子根は傾斜重力屈性をしめすことが知られている.本研究では,トウモロコシとコムギの種子根を対象に,傾斜重力屈性の発現の様相を調査するとともにし,それに及ぼす数種の環境要因と内的要因を見い出すことによって,発現のメカニズムを明らかにすることを試みた. 1.種子根は,圃場においてもまた実験室条件下においても,傾斜重力屈性をしめし,鉛直とは異なる方向に伸長する.とくに,出根直後には負の重力屈性反応をしめし,その後正の重力屈性反応をしめすが,この生長運動は傾斜重力屈性の成立に果たす役割は小さくないと考えた. 2.トウモロコシの種子根を用いて,主要な環境要因である土壌の温度と水ポテンシャルの影響を調査した.負の重力屈性反応は,高温条件下で抑制された.また,水ポテンシャルは出根時の根の方向に影響し,低水ポテンシャルの下で根はより下向きに出現した.数値モデルのあてはめによって,高温や低い水ポテンシャルは,根の生長初期の負の重力屈性反応の消失を早めることが示唆された. 3.コムギの種子根においても,乾燥条件は根の重力屈性反応に影響をあたえ,下方向への根の伸長を誘導した.初生種子根の切除を行ったところ,第一側生種子根の負の重力屈性反応が抑制された.また,その際には第一側生種子根の根端の肥大がみられたことから,同化産物の分配といった内的要因が,種子根相互の重力反応性に関与していることが示唆された.
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