研究概要 |
平成7年度は,主として,桜島南岳から距離に注目しながら降灰が気孔コンダクタンスに及ぼす影響について検討を行うとともに,作物の株もとの火山灰土壌のみを普通土壌に置換する‘簡易土壌改良法'の現地適用試験を実施した。 桜島南岳を中心とする半径40km範囲に栽培されていた数種作物の葉の気孔コンダクタンスを測定したが,距離と気孔コンダクタンスとの関係は不明瞭であった。水ストレスの発生の有無など気象環境に基づく差異,およびSPADによる葉緑素含量の測定値に代表される各農家の栽培管理の強度等,他の要因量の違いによる影響のほうが大きいことを意味する。しかし,葉面に火山灰が堆積している場合には,気孔コンダクタンスの低下による蒸散速度の減少および火山灰の存在による日射吸収量の増加のために葉温の著しい上昇が起こることが観察された。光合成の適温以上に葉温が上昇する場合には,遮光による光合成量低下に加えて高温による光合成低下も起こることを示している。 作物の株もとの土壌のみを火山灰土壌から普通土壌に集中的に置換することによって,同量の普通土壌を混和した場合に得られる以上の収量改善効果が得られることがサツマイモおよびダイズを用いた現地試験で実証された。サツマイモにおいて,地下部重/茎重比は混和区より劣っていたものの,置換区ではそれ以上に著しい全重(地下部重+茎重)の増加が起こったために地下部重はこの処理区で最大となった。さらに,置換区では上質のイモの比率が高かった。株もと土壌の置換面積あるいは置換体積と生育および収量の改善効果との間には飽和曲線的な関係が認められた。‘適正な'置換面積あるいは置換体積が存在することを意味する。
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